ゴミダマはいいぞ(1)

ゴミダマとは甲虫屋が使う略称で、甲虫の中のゴミムシダマシ(科)というグループのことを指します。けっこう大きな分類群で、世界から約16,000種が知られています。

甲虫といえば、カブト、クワガタ、カミキリを筆頭に、人気のあるグループがたくさん存在します。タマムシコガネムシも美しく、一般の知名度も高い虫です。しかしゴミダマはというとそれほどでもありません。そもそも知名度がたいへん低く、ゴミムシダマシといっても、「何それ?」と訊き返されるのはいつものことです。甲虫屋の間ですら軽んじられている感もあります。黒や茶色の地味なやつが多く、あまり人目に触れない環境で生活しているというのが、一般に馴染みの薄い理由でしょう。

しかし、名前からしてダサいゴミダマ、などといってバカにしてはいけません。造形の面白さでは甲虫の中でも群を抜いています。蝶がその翅に絵画的な美しさをもつとすれば、ゴミダマは立体的、彫刻の面白さを備えていると言えるでしょう。

 

端的に言うと、ゴミダマはいいぞ、ということです。

ではなぜ、そしてどんなゴミダマが良いのか。

うみねこで実際に販売している標本を見てゆきましょう。

 

Somaticus spinosus

f:id:hakubutsudo:20160623214526j:plain

マッドマックスですね。刺々しいにもほどがある。顔つきが普通のゴミダマっぽくないところも良いです。 

 

Dichta cubica

f:id:hakubutsudo:20160624191734j:plain

丸い! でも四角い!

どっちだよ、という向きもありましょうが、本当に丸くて四角い虫なのです。前胸は丸っこいのですが、鞘翅にエッジが立っていて、側面がすとんと落ちた箱っぽい体型をしています。店主は勝手に「サイコロゴミダマ」と呼んでいます。種小名もcubicaですしね。

f:id:hakubutsudo:20160624191817j:plain

鞘翅の上面が艶消しなのに側面は光沢があるとか、なぜか脚だけ白い微毛に覆われているところとか、前胸背板の縁だけ点刻があるとか、2センチくらいの適度な大きさとか、あと丸目で可愛いとかね、すごく良い虫ですよね。もう好きすぎる。

…我ながら気持ち悪いのでこのへんにしときます。 

 

Onymacris brincki

f:id:hakubutsudo:20160623214603j:plain

鞘翅が白い、ゴミダマ界のアイドルです。直射日光の強すぎる砂漠に適応したためと言われていますが、じゃあなぜ他の大多数の虫は真っ黒なのかという疑問も湧きます…。

 

Epiphysa sp. 

f:id:hakubutsudo:20160624191858j:plain

黒くて丸い。

f:id:hakubutsudo:20160624191913j:plain

まるで砲丸のようです。表面積をできるだけ小さくするための球形の体、ぶ厚い装甲、癒着してもはや開かない鞘翅など、これらは極端な乾燥に適応した結果と思われます。

 

今回はアフリカの乾燥地帯に生息する種を取り上げました。店主はゴミダマが好きすぎて1回で終わらせる気にならないので、近いうちに第2回をアップしたいと思います!