ニクバエ擬態のゾウムシ

天敵からの攻撃を避けるため、他の生き物そっくりに擬態をしている昆虫は数多く存在します。例えばテントウムシやホタルといった味の悪い虫や、毒針を持っているハチは擬態のモデルとして「人気がある」ようです。いずれも鳥が嫌がって食べようとしないので、そうした虫そっくりの姿をとることで生存率が上がるのでしょう。

 

さて、今回取り上げるのは、ニクバエそっくりの模様をもつゾウムシ(クモゾウムシ類)です。南米で多くみられます。

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これは別種。

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赤い複眼や、腹部の黒と灰色の縞模様など、ニクバエの特徴を驚くほど正確に「再現」していますね。

 

これも別種。

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これも別種。

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どれもフレンチギアナの同じ地域で得られたものです。熱帯の多様性恐るべし。

以前、生きているこの類のゾウムシの動画を見たことがありますが、チョコマカと素早く動き、本当にハエそっくりでした。野外で見たら間違いなく騙されるでしょう。

 

驚いたことに、ヒゲナガゾウムシ科にもニクバエそっくりな姿をしているものがいます。(これ以外にも数種でハエ擬態のものがいることを確認しています)

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前胸背の縞模様や、翅の筋まで「再現」しています。ちっぽけな甲虫ですが、生物の進化の面白さが凝縮されていますね。

そもそも、毒も棘もないニクバエに擬態するメリットは何なのか? 以下のサイトに仮説が述べられています。

http://www.biodiversityinfocus.com/blog/2012/08/09/new-species-wants-you-to-see-no-weevil/

ニクバエ科のハエは非常に素早く、鳥にとっては捕食の成功率が低い獲物です(実際、ハエ類はあまり鳥に食われていないというデータがあるようです)。追い回した挙句に捕り損ねてエネルギーを無駄にするより、もっと簡単に捕れる餌を探した方が効率的なので、ニクバエ類は鳥の標的になりにくいのでしょう。

 

そもそも、クモゾウムシ類やヒゲナガゾウムシ類はとても素早く、模様を抜きにしてもハエっぽい動きをします。この2グループの中で特にハエ擬態の種が多く進化しているのも頷ける気がします。