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時代の証人

古物を扱っていると、時代の証人というべきものに出会うことがあります。

 

例えばこの「WHW」と刻印された小さなハーモニカ。ドイツ製です。

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「WHW」とは、Winterhilfswerk(冬季援助活動)の略で、もともと、ワイマール共和政時代に始まった市民活動でした。貧しい人たちに石炭や衣服を提供するために行なわれた募金事業です。寄付をすると、このハーモニカのような景品がもらえました。

 

…と、ここまでは普通の「良い話」なのですが、このWHWには少々複雑な事情があります。というのも、WHWはナチスドイツが行ったプロパガンダという一面があるのです。

8000種類におよぶWHW褒賞品の多くがバッジやブローチなのも、毎週のように出る新作を身に着けて「私は国策に協力しています」と周囲に示さねばならなかったからのようです。当時の息苦しい世相が想像されますね…。

そうした経緯で、1945年頃までに多種多様な褒賞品が世に出されることになりました。当店にあるのはそれらのごく一部ですが、以下にご紹介しましょう。

 

陶器でできた鳥のバッジ。

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同じく陶器の蝶と蛾。

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民族衣装を着たひとたちの刺繍バッジ。

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プラスチックの花とレースの花。

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ガラスのオーナメント。ちょっと塗料がはげかけていますが、それぞれテントウムシと蚊が描かれています。なぜ蚊?

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WHWはナチスのプロパガンダではありましたが、慈善事業としても確かに機能していたはずで、配給される石炭に助けられた人もたくさんいたのでしょう。同時に、それ以上の方が迫害にあって亡くなりました。

まもなく来る寒い季節。WHWの証を手に取りながら、当時のことに思いを馳せるのもよいかもしれません。

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