お蚕さまのびん
お店にお蚕さまがやってきました。
お蚕さまは「家畜」なだけあって、昆虫らしい野性味がまるで感じられません。あまり歩き回ることもなく、日がな一日桑の葉をかじっています。優しく触れば抵抗もせず、つままれてもなお葉を食べていることもあります。飼育箱をレジカウンターに置いておいたら思った以上に人気で、お客様の視線を集めていました。
さて、当店にはお蚕さま関連の古物が以前からありました。それが「活桑器」と呼ばれるガラスびんです。
『実用新案第二三四七〇號 養蚕活桑器』
昭和10年代に、養蚕業界で「活桑育」という手法が注目された時期があり、その際に作られたものです。水に活けた新鮮な桑の枝葉で育てることで、蚕の病気を防げると考えられたからでした。しかし、じきに蚕の病気は葉の鮮度とは関わりがないことがわかり、活桑育は廃れてゆきます。それでも、その短い期間に数種類の活桑器が作られました。
『実用新案第二三三七六五號 金川式活桑育器』
『育蚕條桑水揚器 願第二三四七〇號』
形はさまざまですが、ゴムパッキンつきの蓋があり、水を満たしたびんに桑の枝を挿して使うものが多かったようです。
最近、奇跡的にパッキンが状態良く残っている活育器が入荷しました。古いものゆえゴムがガチガチに劣化しているのが常なので、これはかなり珍しいケースと言えます。せっかくですから使わない手はありません。
ゴムが柔らかい!
本来の使い方を試してみました。
廃れて久しい、びんによる活桑育が現代に復活した瞬間です!(ペット扱いの蚕だけど)
1頭だけですが、このお蚕さまは引き続きカウンターで飼育します。どうぞ見ていってください。
なお、活桑器のいくつかは通販にも載せています。よかったらこちらもどうぞ。